5月12日、「洋服の並木」の店主
並木祐三氏が心不全のため、お亡くなりになられました。
ご連絡を頂いたのですが
あまりに突然の訃報で、どう受け止めたらいいのか・・・
これが正直な気持ちです。
まずは、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
本日、代々幡斎場にてお通夜が行われました。
どんな気持ちで受け止めたらいいのか
どんな気持ちでお会いしたらいいのか
正直、ピンと来ていないのが本音です。
まだお店にいけば、いつものようにいるのではないか・・・とか思ったり。
並木さんとは、お付き合いを始めて14年ほど。
意外と長かったんだって振り返っています。
ここから先は、個人的な思い出話。
当時、僕の体型に合うスーツがありませんでした。
肩幅・二の腕・裾幅・・・etc etc
お直しして当たり前。
並木さんとの出会いもお直しでお邪魔したのがきっかけでした。
その時、思うようにいかずラインが気に入らず、口論したのを覚えています。
並木さんは、「修理するより作ったほうが早い」と言っていました。
作り手となった今、その言葉がよく分かります。
修理というのは、一回出来上がっているものを崩して作り直す。
非常に手間がかかるものです。
バランスも変わり、作りがよく分かっていないとなかなか手を出しにくいものです。
そこまで言うのなら、じゃあ一回作ってみよう。
・・・と作るのをお願いして、完成したものを着て驚きました。
今までにないサイズ感、これがオーダーなんだって。
今の仕事を始める大きなキッカケになりました。
デザイン画とか絵を描いていると、段々麻痺してきます。
何かいいんだか、よく分からなくなります。
それと同じ。
鏡を見ていると、何だかよくわからなくなってくるんです。
そこで淡々とした口調で、「じゃあ2cm詰めましょうよ」とかアドバイスをくれるんですね。
それが絶妙なんです。
すごくしっくりきました。
昔になりますが、ふとした時に「何でそんなに的確な意見ができるんですか??」と野暮なことを聞いたことがあります。
そしたら笑いながら・・・
「経験ですよ。仕事しながら身に付いたもの、感覚です。
数こなしましたからねえ。出来なきゃまずいでしょ」
・・・と答えてくれました。
今、僕自身の仕事にも言えることですが、個人的にアドリブ力って必要だと思います。
ちょっと変化した時に、どう応対出来るか。
これが大事なんだって思います。
いろんなことを教えてくれた並木さん。
お通夜にも多くの方がいらっしゃってました。
何だか、それだけでも嬉しい。
いわゆる「イズム」を受け継いでいる方々が、こんなにいるんだって。
安心して・・・
だから、悲しくありませんでした。
きちんと挨拶をして、ご焼香してきました。
帰ってきて、ホッと一息。
封筒を開いてみたら・・・
初めて涙がボロボロ出てきました。
そうなんです、モッズスーツにゆとりはいらないんです。
こだわりとスタイル。
そして、生き方と優しさ。
いろんな事を教えてくれた並木さん。
本当にありがとうございました。
合掌